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既存店活性化リエンジニアリングが復活の鍵販売革新2008年6月号寄稿

問われる「組織風土」と経営者の意思

 「既存店」活性化でたどり着くのは、お客ごとに何をどう売るか。販売方法、販促方法を考えなければならない。そして、それらをスムーズに実現するための店舗オペレーションを構築することが重要だ。そのことを考えずしてチラシ政策一つとっても、全くの無駄に終わってしまう。部分最適ではなく、利益を高めるという全体最適の中で、個々の政策を打つ癖をつけることが組織改革の要だ。
そのためには、経営者自身が「組織風土」をいかにつくるかということに最大の知恵を絞らなければならないだろう。
 私は銀行員時代、1口5万円の月掛け定期を取ることと、1口1万円の定期を5つ取ることを比較されたときに、5口の方がコストが5倍掛かるのに評価が上だったことに理不尽さを感じたことがある。
 「正しいことをきちんとやりましょう」という風土がなければ、必ず網の目をくぐって行う部分が出てくる。評価する側が正しくない限り、現場は必ずゆがみが出てくる。これは内部監査以前の問題だ。
ある二者択一の問題があったときに、こっちが正しいとぱっと言える企業文化を持つところは強い。しかし経営理念がいくら立派でも、現場と遊離しているパターンもある。それは本当の意味で理念と方法論が根付いていないからではないだろうか。
 その企業の教育や人事は、経営者の思いが如実に表れる。教育システムはカリキュラムの優劣ではない。教育は人をつくる行為にほかならない。経営者自身が襟を正して、正しいと信じることをやり抜く。自分の分身を幾つもつくるという気持ちが重要。仕事が好きというより、それを仕事と思わない人がいい。
 この人に幸せになってほしい。うちの店を利用することでお客が幸せになってほしい。いいものを買ってほしい。生活が良くなってほしい。そういうロマンを経営者は持つ必要があるだろう。
 表現は悪いが、安いものを買ってもらって節約しましょうだけでは小売業の存在意義はない。良いものを安く、価格だけではなく品質が伴わなければ本当の顧客満足は実現できない。
 今、多くのチェーンはナショナルブランド(NB)のただ乗りになっていないだろうか。PBも買い取りにして、これだけコストを省いたという正当な理由、正当な理由とは「誰もが損をしない」方法でもって実現し得ているだろうか。
 誰かに損を集めてしまうやり方は、必すひずみが生じる。皆が努力して、お客のために痛みを分けて、還元するならばこれほど素晴らしいことはない。
 「顧客」軸MDで考えると、お客は常に分かりやすく、自分にとって快適な買物空間=「私の店」を求める。食品では、どの野菜を使ってどんな料理ができるのか。カレーひとつとっても今の旬だと何の野菜が入るとおいしいのか。「あのお店に行けば、メニューが浮かぶ」、「あのお店に行けば、なりたい自分の服が買える」、「あのSCに行けば、皆で楽しい食事ができる」、そんな提案を求めてお客は「来店」するのである。
 このようなお客の生活解決ができる企業が存在してこそ、「ディスカウント(DS)」は成立する。
 ただし、すべての企業がDS志向だと業界全体は縮小均衡に陥るだろう。DS方法の巧拙あるいは優劣だけで競うと、ローコストオペレーションができるかどうかの違いになる。そこにはお客はある意味、不在だ。「提案」や「問題解決」へのアプローチがなくなり、価格訴求の方法論のみがクローズアップされる。これは別の見方をすればお客を突き放したかたちになる。
 本来は、ローコストオペレーションも提案のための商品開発も店頭での十分な接客もできるのが理想だ。ところがなかなか両方を求めて、それぞれの平均値から最高点に近づけることは至難の業だ。だからどちらかに寄ってしまうのだ。
 逆に言えば、偏った方が、それぞれのお客に最大限貢献することになる。だから一方をもって、一方のやり方を批判することはナンセンスだ。
 むしろ、DSへの傾倒が進み、少子高齢化の中、消費の総量はますます減っている趨勢の中で、ことに今、お客が不便、不満に思っている分野を解決していくという「解決型消費」を伸ばしていくという試みは大切だろう。
 メーカーは「需要創造」し、小売りは「顧客創造」をする。今、チェーンストア各社はPB戦略を推進しているが、商品個々の品質を担保できるのは、NBである。
 もちろん製造小売りを志向し、お客から認知を受けているチェーンブランドも出てきている。
 しかしながら、「総合」をはじめ複数カテゴリーを扱う業態であれば、すべてをストアブランド(SB)、あるいはPBで埋め尽くすことはできないだろう。
 その意味では、多くの需要開発を担うNBも値上げ基調の中、売る技術力がチェーンストアに問われている。
 NBかSBあるいはPBいずれが買われるのか。もちろんそれはお客が決めることだ。
 その中で、「製配販」による真のバリューチェーンをつくっていくことが、「総合業態」再生の突破口になるのではないか。