Marketing Analytics

カテゴリーごとの適正在庫コントロールを経営戦略のベースにできるか否かがカギ月刊MD2010年5月号

なぜSKU数を増やすのか減らすのか明確なストーリーをつくる

 単純に在庫を減らすのであれば、それこそコンビニエンスストア(CVS)がやっているような徹底したABC分析管理による単品管理で売れ筋だけを置けばよい。しかしそれを総合スーパー(GMS)にそのまま当てはめた時、何が起こったのか。誤解を恐れずにいえばお客様にとって面白くもなんともない店ができてしまった。つまりコンビニは30坪というサイズで小商圏立地の「コンビニエンス」というお客にとってのご利益を追求するモデルであって、中商圏型の総合スーパーでそのままCVSのロジックを当てはめ絞りこんで しまった結果、お客の離反を招く展開になってしまったのである。
 Dg.Sは、企業によって描くビジョンは異なるが、医薬品と化粧品という健康と美を求めて来店されるお客に対してはコンビニ型の単純なABC分析による絞込みはそぐわないと思われる。
 今Dg.S企業にとって必要な視点はロイヤルカスタマーをつくれるような店舗づくりである。ロイヤルカスタマーをつくるためには、そこにストーリーがなければならない。わが店で買うというお客様のストーリー、わが店が好きだというストーリー、そこを明確にして、ここで買うことが私にとってベストなのだという、品揃えなり、販促なりが、きちんとそれぞれの人に落ちてこなければならない。
 企業が思い描く顧客ターゲットをセグメントして商品構成も品揃えも徹底する。徹底することで客層を広げるという方法論を確立しないかぎり、わが店の本当の専門性は確立しないのである。
 ところが、現在、残念なことに小売りのバイヤーもわが店のお客様にとって本当にいい商品を売っていこうという気が希薄で、メーカーから有利な条件が取れる、あるいは今期の自分の目標を達成するためにやらなければいけない商品はこれだ、という話にすり替わっている話が多いのではないか。
 お客様第一の売場にするということを目標にしている企業は多いが、本当に自分たちがセグメントしてターゲットにしたお客様が買っているものを前面に出し、売りたい理由をきちんと書き、商品に語らせる。それがPOPであったり、説明書きであったり、用途機能別の棚割であったりするのだ。それを価格ラインで見せていくのか、用途機能のカテゴリー種類で見せていくのか、フォーマットで展開するのか、これがそれぞれの企業における固有のノウハウであり技術なのである。
 ある大手チェーンは売れ筋のNB商品をしっかり売って、そこから単にNBの低価格タイプではない付加価値の高いSBにスイッチしてもらえるような店頭MD戦略をとっている。これはチェーン企業の定石だが、効果がはっきりと分かっているゆえに売場でより明確に打ち出されているのである。
 その企業は価格政策ではEDLPであり、売りたい商品はボリューム陳列で展開し、ボリュームで訴える以上、それを勧める明確な理由が売場で示されている。
 SKU数を絞るというセオリーに逆行して目先の「品揃えの豊富さ」を目指してSKU数を闇雲に増やす企業もあるが、プロセスとしてはそれもアリである。
 闇雲に増やした中で、本当にお客様に支持されている商品をデータに基づいてピックアップできればよいのである。また、応用技術として競合環境を考えて、あるカテゴリーに関しては徹底してSKU数を増やすという方法もとれるのである。
 大事なことは、SKU数を増やすにせよ減らすにせよ明確な方針によってそれが決定されているかどうかである。何を増やし、何を減らし、あるいはなくすのか。これがストアロイヤルティーをつくる上で重要な戦略なのである。